- Prehospital Care -
プレホスピタルケア
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フローチャート

プレーヤーが倒れた場合(意識がなくなった場合)のフローチャート。
倒れたプレーヤーを救助する場合、それは試合中であったり、路上であったり、様々な状況が考えられます。救助を行う人がまずは自分の安全を確保した上で、救助に向かう必要があります。また、頭頚部外傷があった場合あるいは疑われる場合は、頚部を保護した上で反応や呼吸を確認する必要があります(MILS; Manual In Line Stabilization, ミルズと呼びます →9. MILSで解説)。

プレーヤーが外傷なく倒れた場合のフローチャート (DR ABC)
プレーヤーが頭頚部の外傷後、倒れた場合のフローチャート (DR ABC)
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心肺蘇生

 倒れた選手に反応がなく、呼吸がない場合、心配蘇生処置の適応と判断し、ただちに胸骨圧迫を開始する。呼吸の有無の確認には、 胸と腹部の動きを観察し、動きがなければ「呼吸なし」と判断する。しゃくりあげるような不規則な呼吸である死戦期呼吸の場合も心肺蘇生を開始する。また、周囲の人に救急通報(119番通報)とAEDの手配を依頼する。

 胸骨圧迫胸骨下半分を1分間に100〜120回程度の速さで、胸が約5cm程度沈むように圧迫する。小児における深さは胸の厚さの1/3とする。
AED(自動体外式除細動器)は心停止の原因となる心室細動に対する治療法であり、専門家でなくても操作できる。電気ショックの必要性は胸にパッドをつけることで自動で解析し、判断してくれる。使い方は、①電源を入れる、②パッドを胸部に貼る、③傷病者の体に誰も触っていないことを確認して、電気ショックのボタンを押す、の3ステップである。電気ショック後は胸骨圧迫を再開し、傷病者に普段とおりの呼吸が戻るまで、あるいは救急隊に引き継ぐまで胸骨圧迫を継続する。

 人工呼吸を行う際は頭部後屈下顎挙上にて気道確保を行う。1回換気量の目安は人工呼吸によって傷病者の胸の上がりを確認できる程度とし、送気(呼気の吹込み)は約1秒かけて行う。この時、胸骨圧迫と人工呼吸を30:2で実施する(小児の場合は15:2)。訓練を受けていない一般の人が蘇生を行う場合、胸骨圧迫のみ行う。
傷病者に普段通りの呼吸を認める時は気道確保を行い、救急隊の到着を待つが、この間、傷病者の呼吸状態を継続して観察し、呼吸が認められなくなった場合はすぐに心肺蘇生を開始する。人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生を行うのが望ましい状況は、窒息、溺水、目撃のない心停止、遷延する心停止状態、小児の心停止である。

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RICE処置

 急性外傷に最初に行うべき応急処置として、RICE処置がよく知られている。患部の安静Rest)、冷却Icing)、適度な圧迫Compression)、そして挙上Elevation)を行うことが、過剰な炎症を抑え、腫れを長引かせないためにも重要である。冷却は20分程度行い、間隔を置いて行うことが薦められる。

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創処置

 止血の基本は創のある部位を直接圧迫して止血する圧迫止血であり、清潔なガーゼ等を創に直接あてて圧迫する。

 創が泥などで汚染されている場合は水道水で十分に洗い流す。近年、創傷に対する治療は「創を消毒後、ガーゼを当てて乾燥させる」から「消毒せず、乾燥させない」湿潤療法へと移行している。消毒薬は細胞傷害性があり、乾燥は生きている細胞を死滅させるため、創の治癒を遅延させると考えられるからである。また、ガーゼは組織修復に関わる因子を含む浸出液を吸い取るほか、傷口に固着して剥がす際に出血や痛みを伴い、再生上皮も同時に剥離させる。ハイドロコロイド被覆材などを用いた湿潤療法により、痛みを少なく、早く、きれいに治すことが可能となるが、創の種類、汚染の程度、縫合処置の必要性などにより処置が異なるため、判断に迷う場合は医療機関で処置する。

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搬送

 スポーツ現場で選手が倒れ、歩行困難な場合は担架を用いて搬送する。頭頚部損傷の場合や、傷病者に意識がない場合、頚椎を保護する必要があり、頚椎カラーを装着することが推奨される。担架に乗せる際、リーダーは選手の頚部を固定する。ログロール法では、3人で選手の体を手前に90度回転させ、残りの一人がボードを背中にあて、あおむけに戻す。リーダーは体の回転に伴い、頭を回転させる。リフトアンドスライド法では、両脇の3人ずつで体を持ち上げ、もう一人が足の方からボードを挿入する。日常から訓練しておくことが望ましい。

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熱中症

 熱中症は適切な予防措置さえ行えば、必ず防ぐことができる。暑熱時にスポーツを行う場合、気温のみでなく、湿度などを考慮したWBGT(湿球黒球温度)を指標にする。体温が40℃を超え、脳機能に異常をきたす熱射病の状態に至ると死亡率が高くなるため、治療は一刻をあらそう。

 汗では水分と同時に塩分も失われるため、スポーツ中は塩分を含むスポーツドリンクなどを摂取することが薦められる。運動前は250-500ml、競技中も1時間あたり500-1000mlの水分を補給するのが一つの目安となる

 意識障害を認めた場合はすぐに救急隊を要請し、無い場合は涼しい場所への避難、脱衣、冷却、水分塩分の補給を行う。現場での身体冷却法として、身体を氷水に浸して冷却するのが効果的であり、用意があればバスタブで、無ければ濡れたタオルを当てて扇風機などで強力に扇ぐなどする。また、氷やアイスパックを頚部、腋の下、大腿の付け根など太い血管に当てて冷却を追加する。

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頭部外傷

 頭部外傷後に、持続する意識障害呼吸障害瞳孔不同手足の麻痺言語障害けいれん繰り返す嘔吐などの症状があれば、重症の頭部外傷の可能性があるため、速やかに救急要請を行う。

 それらの症状がなくても、①意識消失があった、②外傷前後の記憶がはっきりしない、③これまでにない頭痛あるいは持続する頭痛、④めまい・ふらつきや複視、⑤麻痺(手足に力が入りにくい)やしびれ、⑥興奮や混乱がある、⑦何度も繰り返している脳振盪、のいずれかに当てはまる場合、病院を受診する。受傷直後に意識障害はなくても、後から意識障害が出現して悪化する場合があるので注意する。意識障害についてはJapan Coma Scale(JCS)あるいはGlasgow Coma Scale(GCS)を用いて評価する。

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脳振盪

 脳振盪の症状は、頭痛、めまい、気分不快、意識消失、健忘、嘔気・嘔吐、バランスの障害、反応の鈍さ、見当識障害と多彩である。意識消失がない脳振盪の方が多く、上記症状の一つがある場合は脳振盪を念頭に置く。脳振盪を起こした場合、プレーを継続させないことが原則である。

脳振盪からの段階的復帰プログラム

 脳振盪を起こした日はプレーを継続させないことが原則である。競技復帰に関して、脳振盪は繰り返しやすく、また重篤化・長期化することがあるため、段階的競技復帰プロトコールを指標に行う必要がある。段階的競技復帰プロトコールでは、最低24時間の間隔をおき、問題がなければ次の段階に進むことができる。

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スポーツ外傷・障害からの復帰

スポーツ外傷・障害からの復帰に重要なことは、①運動量の調整、②アスレティック・リハビリテーションをはじめとする適切な身体の使い方・競技動作の習得、③段階的競技復帰である。一度の外力で受傷するスポーツ外傷は偶発的な要素も大きいが、受傷する身体的要因があるケースも多い。外傷後の患部の安静により筋力や関節可動域などは低下しており、アスレティック・リハビリテーションにより身体機能の改善・再発予防に努め、段階的に競技復帰する。繰り返しの外力の蓄積で生じるスポーツ障害は、ある競技動作による使い過ぎのみでなく、コンディショニング不足(柔軟性低下・筋力不足・バランス不良など)や不良な競技動作や要因となるため、アスレティック・リハビリテーションを行った上で、段階的競技復帰を行うことが大切である。

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MILS

頭頚部損傷が疑われるプレーヤーに対する頚部を保護する固定法です。救助者はプレーヤーの頭側に位置し、手と前腕を用いて、プレーヤーの頭部と頚部を固定します。プレーヤーに声が届くよう、耳をふさがないようにします。

MILS (Manual In Line Stabilization, ミルズ)